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【デジタルえほんアワード受賞者インタビュー】石川由貴さん・海親(みちか)さん

 
 

 
 
デジタルえほんアワード受賞者インタビューシリーズ、3回目の今回は、第3回デジタルえほんアワード作品部門準グランプリの『きりえほん 〜しんかいさんぽ〜』の作者石川由貴さんと、同じく作品部門入賞をはたした『コロリロン』の作者海親(みちか)さんのインタビューをお届けします。
 
受賞者のお二人はなんとまだ女子大生。
今年の春に卒業を控えた、女子美術大学に通われている大学4年生です。
プロ顔負けのすばらしいデジタルえほんが生まれた経緯をうかがいました。
 
 
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《石川由貴さん&海親さん インタビュー 2014/11/12》(聞き手:堀合俊博)
 
 
受賞作品ができるまで
 
 
–この度は、石川さんは準グランプリ、海親さんは入賞ということで、おめでとうございます。受賞後に反響などありましたか?
 
海親さん(以下敬称略):Facebookとかでお知らせしたら友だちが見てくれて。受賞のニュース見たよとか、写真載ってたねとか言ってくれて、結構驚きました。
 
石川由貴さん(以下敬称略、石川):地元の友だちに話したら、実際にアプリをやってみたいということでダウンロードしていただいて。さらにAppStoreでコメントまで書いてくれて、すごく嬉しかったです。
 
–今回の作品は、女子美術大学での季里先生の授業で制作された作品とうかがいました。お互いの作品についてどのような印象をお持ちですか?
 
海親:彼女の作品は、こうやってデジタルえほんになる前に、別のかたちでもう既に作品になっていたので、それがまたデジタルえほんという別のかたちになったのが面白いと思いました。あと、授業では作品作りと一緒に子ども向けのワークショップを実施するんですが、そこで切り絵を作って子どもたちと一緒に紙に貼るワークショップをしていて、デジタルえほんとはまた別のかたちでとてもいいなあと思いました。
 
石川:私も彼女が作っている最中から横目でちらちら見ていたんですけど、すごい絵がかわいくて。作品の中に登場する海牛?のキャラクター(リロ)ががすごく好きなんです。モノクロで統一された世界の中で、かわいいキャラクターたちを魅力的に見せるのはすごいなあと思いました。あと、四角形をタッチするだけっていうわかりやすく、簡単な操作だけで、いろんなアクションをできるところが好きです。
 
–それでは、それぞれお二人の作品について伺っていきますね。
 石川さんの作品『きりえほん』は、以前に制作されたアニメーションをデジタルえほん化した作品とのことですが、そうしようと思ったきっかけは何だったんでしょうか?

 
石川:もともとは昔作った切り絵のコマ撮りコマドリアニメ−ションがあって、季里先生からこれをアプリにしたらもっと面白くなるんじゃないかなとアドバイスをいただいて、それでやってみようと思ったんです。
 
–制作の際にアニメーションとアプリの違いとして、気をつけたことはありますか?
 
石川:季里先生に、デジタルえほん化をすすめられたときに、切り絵自体のシルエットが、「一体これは何の生き物なんだろう」といったように、子どもたちの想像力を駆り立てるようなことができる絵本になるんじゃないかとおっしゃっていただき、そのことを意識しながらデジタルえほんとして制作しました。はじめてのアプリ制作だったのでなかなかやりたい動きができなかったり、あまり細かい所をつめすぎちゃうとアプリの動作が重くなってしまったりと、うまくバランスをとるのが難しかったです。
 
–深海のモチーフを選ばれたのはなぜですか?
 
石川:「メンダコ」っていう深海のタコがいるんですけど、小さい頃に深海の生き物についてのテレビ番組でそれを知って、すごく可愛くて。そこから深海に興味を持ったんです。
最初にコマ撮りで切り絵のアニメーションを作る時に、深海ってどんな生物がいるかがわからないので、シルエットでやった方が見てくれる人が想像してくれるかなと思ったんです。「まだ見ぬお魚がいるんだぞ」っていうこと伝えられたらなと。
 
 

 

《石川由貴 「きりえほん 〜しんかいさんぽ〜」》
 
 
–最初の方はページナビゲーションがある作りなのですが、途中からそれをなくし、登場するアンコウに導かれるかたちになっていますが、そのように制作された意図はどういったものなのでしょうか?
 
石川:読み手の人にいろんなところをタッチしてもらって、ああここも動くんだって、反応するんだって気づいてもらいながら、道を探してもらおうという意図で、途中からページめくりのナビゲーションをなくしたんです。ただめくっているだけじゃつまらないなあと思ったので、何かが動いたら反応して、次のページに進むっていうかたちにして、冒険感を出してみました。そこを気づいてもらえなくて、これで終わりなのかと勘違いされたらどうしよう…と自分でも不安なところがあったんですけど、気づいてもらえてるようでよかったです。
 
–ありがとうございます。それでは、海親さんの『コロリロン』について伺っていきますね。
はじめから、動く四角形に導かれるかたちで鑑賞するしくみになっていますが、こういった設計はどういったアイデアからきたのでしょうか?

 
海親:制作をしていくうちに、動くものってすごく押したくなるなあっていうことが分かったんです。そこから、ナビゲーションとなる四角形を最初から動かすようにしたりとか、自然なかたちで四角形を押すことをわかりやすくするようにしていました。
 
 

 

《海親 「コロリロン」》
 
 
–色彩をモノクロで統一したのは意図として何かありますか?
 
海親:アプリでデジタルえほんを作るとなったときに、アプリの機能に慣れる試作の段階で灰色が気にいったんです。そこから、灰色中心にパーツを作っていったんですけど、それをご覧になった先生がけっこう気に入って下さって。最初は灰色の中にも少しだけ水色とか入れようと思っていたんですけど、それはしないほうがいいんじゃないかとおっしゃっていただいて、作っていく中で自分でも全体の雰囲気や色彩の見え方の具合からその方がいいなと思ったので、モノクロで統一しました。
 
–作品の独特な世界観に何かコンセプトなどはありますか?
 
海親:デジタルえほんというよりは、アプリを作りたいという気持ちが大きかったので、ゲームとかおもちゃ感覚で楽しんでもらえるものがいいなと思って作っていきました。昔好きだったフラッシュの作品で、クリックしたら反応するだけのものがあったので、そういったものを思い出しつつ作った部分もあります。
 
–デジタルえほん作品の中にはしばしばゲーム性のようなものが盛り込まれた作品が見受けられるのですが、ゲームとデジタルえほんとの関係についてどう思います?
 
海親:ゴールに行ったときに、そのゴール自体も正解だって思えるか否かという感じですかね。ゴ−ルに行って、これは完全に失敗だと思ったらそれはゲームになっちゃうんじゃないですか。ゴールが失敗だったとしても、それが物語、絵本の内容として、これでよかったなという気持ちになれたら、それは絵本になるんじゃないですかね。
 
 
言葉のないえほん作り
 
 
–これはお二人の作品に共通して言えることかと思いますが、作品の中で言葉を用いないといことに、何か想いや考えはあるのでしょうか?
 
石川:私は、タイトルである『しんかいさんぽ』の通り、深海を自由に散歩しているイメージだったので、そこに言葉はいらなくて、読み手である人たちが、それぞれの目線で作品の中で登場するあんこうなどの生き物たちが何か言っているように感じたり、それぞれストーリーを自分の頭で考えて欲しいなという思いがあったので、あえて言葉はいらないかなと。
 
海親:私は、いろんなひとに楽しんでもらいたいなという思いがあります。今回のデジタルえほんアワードでも世界中の作品が集まっていたかと思いますが、海外の作品で言葉が中心となるものに関しては、やっぱり言語の壁があるなあと思うんです。子どもたちにとっては、特に読まなくても楽しめる場合もあると思うんですけど、おとなというか私からするとそれが気になることが多くて、それなら最初から読むっていうことを無くしてみるのもありかなと思ったので、『コロリロン』ではそれをやってみました。
 
 
絵本を読むこと、つくること
 
 
–普段絵本は読みますか?
 
石川:はい、私は子ども向けのかわいい感じの作品が好きで、そういった表現には興味があるので、普段の制作も子ども向けのような絵柄のものが多いです。
 
海親:私は子ども向けのものが好きというよりは絵本が好きですね。
 
–好きな作家さんとかいますか?
 
石川:私は誰にでも親しみやすいような絵のタッチが好きで、マンガやアニメから影響されることが多かったりするんですけど、そうですね、たとえばジブリアニメーションの絵が凄く好きで、けっこう影響されたかなあと思います。
 
海親:もともと好きだった絵本だと、「ぐりとぐら」とか、いせひでこさんの絵本とかがすごく好きですね。本を造るおじさんのはなしの(「ルリユールおじさん」)とか、「にいさん」っていうゴッホのお話とか、けっこう大人向けっぽい絵本を書く人なんですけど。制作の時は結構いろいろな絵本を見てたので、作品にはそれらが混ざって影響されているかもしれませんね。
 
–制作の際には、鉛筆や絵筆などといったアナログな手法と、ペンタブレットなどのデジタルツールを使ったものと、どちらを使用されることが多いですか?
 
海親:最近だとデジタルの方が多いですね。
 
石川:どっちも好きなので同じくらいです。
 
–制作プロセスや出来上がってくる作品において、アナログとデジタルの関係性はこれからどうなっていくと思いますか?
 
海親:最近はアニメーションも手描きよりもパソコンで最初から描いてるものや、3Dアニメ自体もけっこう増えてきたかと思います。アニメの中に3Dが混ざっていたり、全部3Dで作っていたり。これからもっとデジタルのものが増えていくとは思うんですけど、だからといってアナログが完全に消えるというのはないんじゃないかなあと思います。やっぱり好きな人がかならず残ると思うので。
 
石川:確かに、和紙とかも話題になったりしているので廃れたりはしないと思います。
 
–これからデジタルデバイスが当たり前のものになっていく中で、デジタルえほんはどうなっていくと思いますか?
 
石川:デジタルは動きや反応がリアルタイムで得られるものなので、子どもたちにとって刺激になると思うんです。それはそれでいいと思うのですが、紙の本を実際に自分でめくったり、現実の動作で楽しんだり、ものの質感からも作品のオーラというか、そういったものが伝わってくると思うので、それはそれで両方ともあって欲しいなというのが私の気持ちです。
 
海親:デジタルえほんは、押したらスマホの中で反応が起きるっていうタイプの「しかけ絵本」だと思うんですけど、紙のしかけ絵本って、紙の端をひっぱったり、自分で動かすものじゃないですか。その違いがあるので、両方残って欲しいという思いがあります。
 
–お二人にとって、デジタルえほんとはどういったものでしょう?
 
石川:絵本界の未来への架け橋…みたいな。
 
海親:私は、紙のえほんにもデジタルのえほんにもいいところはあって、そこまで大きな差をつけるものなのかなという気持ちにもなります。流通の問題とか、お金の問題だとか差はけっこうあるのかなと思うんですけど、絵本として楽しむという観点でいうとそんなに差はないのかなって思います。
 
–それじゃあ、絵本ってどういうものなんでしょう?
 
石川:作者の思いを絵で具現化したもの・・・ですかね。
 
海親:私の場合、作品自体が自分の手元から離れた場合は、結局は全部相手の受け取り方次第になってしまうと思っています。自分がこう思って書いた、っていう場合でも、ひとによってはぜんぜんそういう受け取り方をしなかったりもすることもけっこうあると思うので。なので、絵本も積み木やぬいぐるみみたいに、持っている人が自由に楽しむおもちゃみたいなものなのかなと。
 
 
石川:たしかによっぽど伝えたいことがなければ、相手の想像に任せる感じ、ですかね。
 
–今後どういったものを作っていきたいですか?
 
海親:絵本みたいな絵柄とか、お話、謡みたいな雰囲気が好きなので、そういった雰囲気のある作品をまた作っていきたいなと考えています。
 
石川:私は、作品を見た人が楽しい気持ちになって欲しいという思いが強いので、多くの人にいろんな面白いものを体験してもらえるような作品を作りたいと思います。
 
–ありがとうございました。
 
 
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デジタルえほんアワードがはじまってから3年、その歴史はまだまだ浅いのですが、このお二人のような若手のクリエイターが確かな“デジタルえほん観”を持ち、こんなにもクオリティの高い作品が生み出されているということに、私たち事務局としても大変励まされます。
 
次回はさらに若手、最年少受賞者のインタビューをお届けします。
 
(ほりあい)
 
 

2015年3月23日