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【えほん社の本棚 紙のえほん 042】『根っこのこどもたち目をさます』

 
 
 
こんにちは。おひさしぶりです。
えほん社の本棚(紙のえほん)お休みをしていたら、東京はすっかり春ですね。
縮こまっていた木や葉たちが、いきいきとのびをしているようです。
改めて、えほん社の本棚どうぞよろしくお願いいたします。  

 

さっそくきょうのえほんのご紹介をしましょう。
今回のテーマは、春。
春はいつのまにかやって来ていて、ずっといたかのように寄り添っています。
きょうの一冊は、春の準備が描かれているえほんになります。
  

 

S・V・オルファースさん・絵、H・D・フィッシュさん・文、いしいももこさん・訳の「根っこのこどもたち目をさます」です。 
 

おひさまの日差しがあたたかくなり、風がやわらかく吹きはじめたころ、じめんの下ではなにが起こっていたでしょう。
ぐっすり眠っていた根っこのこどもたちは土のおかあさんに起こしてもらい、じぶんたちが目をさますときをよろこびました。そして、それぞれに春の支度をはじめます。
 
 

土のした、夜のくらやみ、宇宙のはて、こころの中、肉眼で確認できないところがあります。この確認できない部分は解明することができるし、知ることができることもたくさんあります。けれども、わたしはちいさなころから、分からないままに持つことを大切に思っていました。どこにも答えのない、空想と想像のひろがる余白を感じていたようです。
知ることを大切にしながらも、この余白のことを忘れずにいたいなと思っています。
  

「根っこのこどもたち目をさます」は、季節をより豊かに味わうことができるきっかけをつくる一冊になるのではないでしょうか。
このえほんを読んでから、こどもたちとそとをおさんぽをしたら、どんな会話ができるのかなと想像します。
(たねおい)
 
 
 
 

文: H・D・フィッシュ
絵: S・V・オルファース
訳:いしいももこ
出版社:童話館出版(http://www.douwakan.co.jp/group/books/306.html
定価: ¥1,333+税 円
発行日: 2003年03月
ISBN: 9784887500433

2014年4月24日
【えほん社の本棚 紙のえほん 041】

 
 
こんにちは。
メリークリスマス。
今宵は、こどもたちはわくわくしている夜ではないでしょうか。 
 

12月のテーマは、「クリスマス」。
クリスマスイブのきょうは、クリスマスの夜の出来事を描いた一冊を
ご紹介させていただきます。 
 

クリス・ヴァン・オールズバーグ・絵と文
村上春樹・訳
急行「北極号」がきょうの一冊です。
 
 

おとなになった“ぼく”が、こどもの頃のあるクリスマスの日の
色あせない出来事をふりかえるように綴られたおはなし。
クリスマスイブの夜中、“ぼく”は静かに息をすまして、耳をすまして、
サンタの鈴の音が聞こえるときを待っていました。
夜が深くなり、聞こえてきたのは、
鈴の音ではなく汽車のとまる音。
急行『北極号』へ乗り込み、クリスマス前夜のすてきな旅がはじまります。 
 
 

このえほんに出会ったのは、高校の図書室でした。
昨年ご紹介したT・S・ハイマンの「クリスマスをさがして」(http://digitalehon.net/archives/2212)と
同じときに出会った一冊です。
えほんも本も読まなかったわたしが、
手を伸ばし
ここを入り口にえほんのせかいへあゆんでいった思い出の一冊です。 
 

おとなに向かって、つんとして背伸びしていた高校生のわたしが
こどもの持つきらきらしたファンタジーのせかいに再会して
「こんなせかいもあったのか」と感動したのだと思います。 
 

どこでどんな出会いがあるか、わかりませんね。 
 
 

今宵、どんな夢を見られるでしょう。
すてきなクリスマスになりますように。
(たねおい) 
 
 
 

急行「北極号」

作・絵: クリス・ヴァン・オールズバーグ
訳: 村上 春樹
出版社: あすなろ書房(http://www.asunaroshobo.co.jp/home/index.html
税込価格: ¥1,575(本体価格:¥1,500)
発行日: 2003年11月
ISBN: 9784751519998

2013年12月24日
【えほん社の本棚 紙のえほん 040】『さむがりやのサンタ』

 
 
 
 
こんにちは。
おひるには暮れのひかりをかんじるこのごろです。
かぜなどひいておりませんでしょうか。 
 
12月のテーマは、「クリスマス」です。
サンタさんはどんなひと?
どんなふうにやって来る?
見ることができないせかいをこどもたちとのぞくようなえほんを
ご紹介させていただきます。
レイモンド・ブリッグズ作・絵すがわらひろくに訳
『さむがりやのサンタ』がきょうの一冊。
 
 
 
いつから眠りについていたのか、
夏のあつい海辺でよこになる夢を見ていたサンタさん。
12/24、ジリジリと鳴る時計に起こされ、サンタさんは目を覚まします。
トナカイにえさをやり、飼っている犬や猫に朝ごはんを与え、
ラジオや新聞で今夜のおてんきを気にしながら、朝ごはんをたべます。
そりを出し、
赤い帽子、赤いコート、赤い手袋を身につけて、
さあ、こどもたちのもとへ。 
 
 
昨年、えほん社blogで12月にご紹介した
「ゆきだるま」(http://digitalehon.net/archives/2146)の作者が描いた
『さむがりやのサンタ』。 
  

すくないことばと表情から
サンタさんの人柄を感じられる点がとても印象的でした。
サンタさんのことばだけ読むと
すこしぐちっぽくて、がんこそう、
もしかしたら、はじめ近寄りがたいかもしれないと想像がふくらみました。
けれども、絵や表情を見ているとやさしさが伝わってきます。
 
そらをトナカイとそりにのって駆けぬけている姿。
雪のつもった屋根にのこる足跡。 
 
リアリティーとファンタジーが絶妙な一冊です。
サンタさんを待つ前夜によんだら、わくわくして眠れなくなってしまうかもしれませんね。
(たねおい)
 
 
 
さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)
作・絵: レイモンド・ブリッグズ
訳: すがはら ひろくに
出版社: 福音館書店(http://www.fukuinkan.co.jp
税込価格: ¥1,260(本体価格:¥1,200)
発行日:1974年10月
ISBN: 9784834004366

2013年12月10日
【えほん社の本棚 紙のえほん 039】

 
 
 

こんにちは。
11月も指折り数えるほどとなりました。
あっという間に夕暮れを迎えるこのごろですね。

 

今月のテーマは、「たべもの」
中川李枝子作、大村百合子絵の『ぐりとぐら』がきょうの一冊です。

 
 
 

ふたごののねずみぐりとぐらは
料理をすることとたべることがだいすき。
この日も、どんぐりやくりをかごいっぱいにひろって料理をしようと
森へ出かけました。
どんぐりをひろっていたら
みちの真ん中に、おおきなおおきなたまごが落ちていました。
あんまりおおきなたまごなので、
道具や材料を急いで持ってきて、森でかすてらをつくることにしました。

 
 

 

1963年『母の友』に読み切りのおはなしとして登場した『ぐりとぐら』。
このときから月日は50年経ちました。
(ちなみに、はじめは『たまご』というタイトルだったそうです。)

  
 

わたしの家には、おおきなおおきなお鍋があります。
おとな2人でやっと持てるくらいおおきな鍋です。
このお鍋を見たひとはそろって
「ぐりとぐらのカステラつくりたい!」とにこにこと言うのでした。

ある日、それではつくってみようと
みんなで知恵を出し合ってつくってみたのです。
おおきなお鍋はあるけれど、おおきな蓋がなかったものですから
きれいにひっくりかえすことはできませんでしたが
えほんのように、みんなで分け合ってたべました。 
 

つくっているとき、3才のおとこのこが
「ぐりとぐらにおでんわしたの。これから、カステラ持ってきてくれるの。」
と、おしえてくれたことがこころに残っています。

 
 

いまも、えほんコーナーに『ぐりとぐら』はいて、
こどもがめくっている姿をみかけます。
3才のおとこのこも、あのせかいを知っています。
かつてこどもだったおとなたちも、あのカステラのおはなしをしています。

たくさんのこどもたちがともに過ごした一冊。
  
 
こんどはきれいにひっくり返せるように
また、知恵を出し合ってつくってみようと思います。
(たねおい)
 
 
 

ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] (こどものとも傑作集)

作: 中川 李枝子
絵: 大村 百合子
出版社: 福音館書店(http://www.fukuinkan.co.jp/ninkimono/gurigura/

2013年11月26日
えほん社の本棚 紙のえほん 022

 
 
 
こんにちは。
あったかいスープがしみる季節になりましたね。
風邪もはやっているようですので、みなさまお体お大事になさってください。

さて、今月のテーマは、ひきつづき「たべもの」です。
くり、さんま、さつまいも・・・のおいしい季節から
みかん、だいこん、かに・・・のおいしい季節へとうつってゆきますね。

きょうの一冊は、菱木晃子さん作スズキコージさん絵
『スウェーデン民話 くぎのスープ』
です。

ひどいおてんきの秋の夜、
ひとりの旅人が、おばあさんの家をたずねてきました。
「おうちに泊めていただけませんか。」
おばあさんは、しぶしぶ中に入れました。
おもてなしもせず、床を貸すのもくやしいおばあさん。
旅人が、くぎ一本でおいしいスープをつくるというので
おばあさんはどうしてもそのスープを食べてみたくて
水を入れたお鍋に火をかけます。
小麦粉もいれるともっとおいしいと言うので、
おばあさんは小麦粉も用意します。
そして・・・。

 
 
 
 

温度が感じられ、音が聞こえてきそうなスズキコージさんの絵と
テンポのよい菱木晃子さんのことば。
じぶんでページをめくっているのに加速していくようでした。

 

一度よみおわってから、またイラストだけ見ると
「ここはどんなところだろう。」と、むねがおどり
ひとつのページをながいこと眺めていました。

 
 

巧みなことばにおばあさんは、材料を用意したり、
しまいには御礼の硬貨まで渡してしまいます。

おばあさんは、だまされていたのか。
旅人は、だましていたのか。
おいしかったのか。

 

まほうのことばで生まれた
まほうのスープわたしもたべてみたくなりました。

 

さむいよるにおすすめの一冊です。

(たねおい)

 
 
 

くぎのスープ
作: 菱木 晃子
絵: スズキコージ
出版社: フェリシモ出版
http://www.felissimo.co.jp/ohanashino-takarabako/

2013年11月6日