BLOG

【えほん社の本棚 紙のえほん No.9】「もりのなか」

こんにちは
日がすこしずつ長くなっておりますね。
こどものころは「いちばん日が短いのは2月」、「いちばん日が長いのは夏休み」
そんな風に感じておりました。
同じ現実だけれど、
こどもだけにある現実というようなものってありますよね。

きょうご紹介する紙のえほんは、まさにこどもだけの世界のお話です。
マリー・ホール・エッツ「もりのなか」です。

紙の帽子をかぶり、らっぱを持って、
少年はもりへ散歩に出かけました。
いくつものすてきな出会いのある散歩になりました。

はじめの出会いは、らっぱの音に目を覚ましたライオン。
昼寝から起きたライオンは
「かみをとかしたら、ついていっていいかい?」
と少年に並びいっしょに散歩をすることになりました。

2頭のこどものぞうも
少年とライオンを見つけると水浴びをやめて、ついてきました。

このあと、どんなどうぶつに出会えたでしょうか。

わたしの好きなシーンは、
少年はらっぱを吹き、ライオンは吠え、ぞうは鳴き、
まるで楽隊のように行進するシーンです。
少年とはじめて会ったみんなが、
じぶんの声を出し、じぶんの音を鳴らし、
むりをすることなく、自然と連なり歩いていく。
音楽の素敵な力
すぐにともだちになれてしまうこどもの特性を感じます。

はじめて「もりのなか」のページをめくったとき、
すべて白黒で描かれた質感のある絵に、
薄暗くものがなしく、ざわざわした気持ちになりました。
そして、どうぶつがぱっと消えてしまうシーンに対して、
「どこへ行ってしまったのだろう。」
と不安に思ったことが印象的でした。

読んだときの気持ちや絵への印象は、
じんわりとずっと心の中に残るもののようで、
読み直してもその気持ちを思い出します。

内容だけではなく読んだときの印象も含め、
えほんは気持ちを育むきっかけになるかもしれませんね。

「もりのなか」は決して特別なお話ではなく、
こどもの目にうつる世界のひとつのたとえ話のように思います。

おとなとこどもで読んだ印象が異なりそうです。
こどもといっしょに読み、感想を言い合ってみたら、
どんなおはなしができるでしょうか。

(たねおい)

作・絵: マリー・ホール・エッツ
訳: まさき るりこ
出版社: 福音館書店(http://www.fukuinkan.co.jp
税込価格: ¥1,050(本体価格:¥1,000)
発行日: 1963年12月20日
ISBN: 9784834000160


2013年1月22日