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えほん社の本棚 紙のえほん 027 「ゆかいなかえる」

 
 

こんにちは。

あめがひさしぶりに降りました。
からから、さらさらと乾いていた土が
のどの音を立ててごくんごくんとのんでいるように
水を吸収していました。
あめが降り、すこしひんやりとしたくうきに包まれています。 

 

今月は、「雨と音」がテーマ
ジュリエット・キープスさんの「ゆかいなかえる」がきょうの一冊です。 
 

みずのなかに浮かぶたまごたち。
たまごのなかにはくろいてん。

そんなたまごをぱくっと
さかなはたべてしまう。

のこったたまごは、4つ。
その4つのたまごは、くろいてんがぐんぐんおおきくなり
おたまじゃくしになります。
そして、とうとうまえあしも2本はえると、
かえるへと成長しました。

さてさて、4ひきのかえるたちにはどんなことが起こるでしょう。
どんなふうに過ごしているのでしょう。

 

かえるのスケッチを眺めているようなえほん。

かえるはうたっている、
水の中でしりもちついた、
ことばによる描き方は、比喩的です。

けれども、捉えている場面は
たまごがたべられてしまうなど
やさしい楽しいことだけが描かれておりません。

読みおわって、
こどもたちが、公園でおたまじゃくしやかえるを
観察しながらお話しているようだなと感じました。

あたたかみのある暗さ
表情豊かなかえるたちの絵がとってもすてきなえほんです。
お外に出られない雨の日、お家で読む一冊におすすめです。
(たねおい)
 

ゆかいなかえる (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)

作・絵: ジュリエット・キープス
訳: 石井 桃子
出版社: 福音館書店 (https://www.fukuinkan.co.jp
発行日: 1964年7月15日
ISBN: 9784834000337

2013年6月11日
えほん社の本棚 紙のえほん 026 「あめふり」

 
「あめふり ばばばあちゃんのおはなし」 さとうわきこ作・絵  福音館書店 
 
 
 
こんにちは。
こどものころを思い返すと
どんな天気のどんな日だって楽しんでいたなーと思います。
台風の中継をまねたり
どろみずに思い切り飛び込んだり。 
 
 
6月のテーマは、「雨と音」。
じめじめと雨が降る梅雨。
雨の音、かえるの鳴き声、音が聞こえてくる季節。
雨の日がたのしくなるような
聴こえてくる音に耳をすましたくなるようなえほんを
ご紹介させていただきます。 

 

きょうの1冊は、さとうわきこさん
ばばばあちゃんシリーズ「あめふり」です。 
  
雨がずっと、じとじととやまずにいて
こねこも、こいぬも、ばばばあちゃんも、
外で遊べなくて困っていました。 

空に向かって、ばばばあちゃんはお願いをします。
たまにはお天気にしておくれと。
それなのに、あめはつよくなるばかり。
「やなこったー」と、あめふらしさん。
しまいには、バケツをひっくり返したような
あめが降ってきました。 

ばばばあちゃんはカンカンに怒って、
こっちにもかんがえがあるとまきを運び始めました。
さてさて、ばばばあちゃんの考えた作戦とは。 
  

ばばばあちゃんを読むと、こどもの姿が浮かびます。 

例えば、しかえしを汗だくでしている場面では
こどもが何かにいっしょうけんめいになっているときの姿。 
けれども、おばあちゃんのやさしさも感じます。
あめふらしさんたちにしかえしをするけれど
くもがもとに戻るまでお家に泊めてあげますね。
敵味方とならなくて和やかなきもちになりました。 
 
 
 
ばばばあちゃんシリーズは
だれよりもこどもごころを持っているばばばあちゃんの言動と
おばあちゃんのやさしさを感じ
こころがきらきらおどります。 
 
こどもの「なんで?」に答えるような
あめふらしさんの存在があったり
おとながこどものきもちにかえれるような
くもを干す場面があったり。 
 
こどものきもちや視点を大切にしているえほんだなと思います。  
 
くもをみんなが干しているシーンは
何度読んでも
にやけた表情になってしまいます。

じめじめもふっとばしてしまう
ばばばあちゃんのお話です。

(たねおい)
 
 
  

あめふり―ばばばあちゃんのおはなし (こどものとも傑作集)

作・絵: さとう わきこ
出版社: 福音館書店(https://www.fukuinkan.co.jp
発行日: 1987年9月15日
ISBN: 9784834003307

2013年6月4日
えほん社の本棚 紙のえほん 25 「みみずのオッサン」

 
 
 
 
こんにちは 
 
2才のおんなのこと週末にあそびました。
その年の子に響くえほんというのがしっかりあるということを感じました。
保育園のせんせいや幼稚園のせんせいにも
おうかがいしてみたいこのごろです。 
 
 
さて、色をテーマに選んだ、今月最後の紙のえほんは、
長新太さんの「みみずのオッサン」です。 
 
オッサンという名前のみみずのお話。
ちょっとさんぽに出かけたら、
おおきないろがドシーンとおちてきました。 
ペンキをつくる工場、
えのぐとクレヨンの工場も、
爆発してしまったそうなのです。 
 
町も、くるまも、
カレーライスも、ラーメンも、
キリンも、ゴリラも、
ドロドロベタベタ。 
 
 
色におおわれてしまって
「きれいな色ね」なんていいながら
おかあさんもおとうさんも、困っています。 
 
 
みみずのオッサンは、どうしているでしょう。
ちいさなからだで、いろをもぐもぐたべています。
そして、そして・・・。 
 
 
「え!」
「あはは」と笑っていたのに
すっかりお話の中に入り込んでしまう長さんの世界。 
 
幼稚園児のこどもたちが2人、
はじめての空間にどぎまぎ、もぞもぞしている際に
「みみずのオッサン」をいっしょに読んだことがあります。 
 
1ページ目をめくって読みはじめるとすぐに
くぐもっていたかおが、ゆるんでいくのを感じました。
 
「この緑色のどうぶつ何だろう?」と聞くと
「ごりらー!」と。
ページをめくるにつれて
声もどんどん大きく、自信を持ってこたえてくれるようになっていました。

さいごのページにたどりつくと「もう1回!!!」。
ページをはじめにもどして、
こんどはおおきな声でわらいながらよみはじめたのでした。 
 
 
こどもたちのきもちを
すっかりとかしてくれる魔法のえほんです。
(たねおい) 
 
 
みみずのオッサン (絵本・こどものひろば)

作・絵: 長 新太
出版社: 童心社(http://www.doshinsha.co.jp
発行日: 2003年09月
ISBN: 9784494009442

2013年5月28日
えほん社の本棚 紙のえほん 024 「まっくろネリノ」


 

こんにちは 
 
この前、下校後にあそぶこどもたちをふっとみかけました。
3人は自転車
1人はいっしょうけんめいに走って追いかけている風景。 

勝手にじーんと切なくなりました。
と、同時にこどものときはこうだったなーということも
思い出しました。 
むやみに葉っぱをむしり取ったり
ありの巣をうめてしまったり。 
 
 
5月のテーマは、「色」。
きょうの1冊は、
ヘルガ=ガルラーさんの「まっくろネリノ」です。  

おかあさんもおとうさんも
4人のお兄さんもそれぞれ色とりどりに鮮やかな色をしているのに
ひとりだけまっくろのネリノ。
お兄さんたちはまっくろだからとあそんでくれずに
いつもひとりぼっち。 
 
まっくろではないきれいな色になりたくて
お花にたずねたりしますが
どうにもわかりません。 
 
ある日、お兄さんたちがいなくなってしまい・・・。 
 
 
 
こどもの持つ無邪気ゆえの無慈悲さのことを
このえほんを読み思い出し、すこしせつないきもちになりました。 
 
 
理由のない理由で傷をつけ
なにか予期せぬようなことで
とたんにこどもたちは仲をもどしたりしますね。 

ネリノはじぶんを変えられないかとぶつかりますが
じぶんの悲観的に感じていた部分を
ポジティブに捉え、活かし、乗り越えます。 
 
 
とある時期に
特徴の中で悲観的な部分だと感じる部分があるかもしれません。
ネリノのように
消すことなく、変えることなく、
すてきな部分と多くのひとがかんじて過ごしていけたらと思いました。 
 
こころの発達が著しい
小学4年生くらいからよむのに適しているのではないでしょうか。 
見たこともない生物に対しても、ありえないときもちがとじないで
はいっていくことができることができるという
えほんの素敵さも感じました。 
(たねおい) 
 
 

『まっくろネリノ』
作・絵: ヘルガ=ガルラー
訳: 矢川 澄子
出版社: 偕成社(http://www.kaiseisha.co.jp
発行日: 1973年07月
ISBN: 9784032021400 
 
 
 
 

2013年5月21日
【えほん社の本棚 紙のえほん 023】「いろいろへんないろのはじまり」

 
 
 

こんにちは。 
 
いきなりきょうは、質問をしようと思います。 
 
たとえば、木を描くとき
葉を何色に塗るでしょう。
幹や枝を何色に塗るでしょう。 
 
たとえば、お家を描くとき
何色に塗るでしょう。 
 
 
今月は「色」をテーマに
えほんをご紹介しておりますが
きょう、ご紹介するアーノルド・ローベルさん
「いろいろへんないろのはじまり」では、
葉っぱも幹も枝も、お家も、
もともとの、そのものの色はないという前提からはじまります。 
 
 
はじまりは、はいいろのとき。
ほぼすべてのものは、はいいろで
はたまた、しろとくろをしているのでした。 
 
 
まほうつかいは、その景色を変えられないかと
試行錯誤の末、
「色」をつくることができました。 
 
あおいろのとき、きいろのとき、あかいろのとき
それぞれ、どうしても困ったことが起きてしまいます。 
 
 
ことばを追って一度読むと
「はいいろのとき」からはじまり
ページを捲るごとにどんどんせかいが色鮮やかに変化していくこと
もしものせかいの素敵さを
感じました。 
 
 
 
絵だけを眺めてもう一度読みました。
絵をじっくりゆっくり眺めてみると
一度目には見つけられなかった面白みを見つけることができました。 

 
あかいろのときなど
一色の時代が訪れますが
あかはあかでも、濃淡の異なるたくさんのあかによって描かれていること。  
 
また、その絵の中のひとの表情や
くすっとわらってしまう行動が紛れ込んでいること。 
 
 
読むたびに「見つける」をすることができるえほんだなと思いました。 
 
 
 
 
また、読んだあとにも
「色をぬってせかいをつくるのなら、さてどこに何色をぬろうかな」
「色になまえがなかったら、何色となまえをつけようかな」
と、色をめぐるもしものせかいに旅をしてしまいました。 
 
 
現実にたくさんの色があることの素敵さを感じさせてくれる一方、
えほんが与えてくれるもしものせかいに、きもちを広げてくれる一冊だなと思いました。 
 
(たねおい) 
 
 
作・絵: アーノルド・ローベル
訳: まきたまつこ
出版社: 冨山房(http://fuzambo.net
発行日: 1977年
ISBN: 9784572002051

 
 

2013年5月14日