第2回、第3回と、2年連続で企画部門審査員特別賞を受賞した佐藤ねじさん。第2回の「話せる絵本 どうぶつほうもん」、第3回での「路上絵本」は、どちらも子どもへあたたかいまなざしと、思わずクスッとさせるようなユーモアに溢れた、受賞も頷ける企画作品です。
デジタルえほん社では、今年も受賞者の方々にインタビューを実施しました。今回はその第一弾。第3回デジタルえほんアワード、受賞者インタビューシリーズのはじまりです。
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《佐藤ねじさんインタビュー》2014/10/31(聞き手:堀合俊博)
デジタルえほんアワード受賞、その後
−−2年連続受賞おめでとうございます。
ありがとうございます。
−−1回目の受賞となった第2回デジタルえほんアワードへの応募のきっかけは何だったんですか?
社内でちょっとした勉強会をしているときに、何かアウトプットが合った方がいいんじゃないかということで、誰かがデジタルえほんアワードの話を持ってきたんです。それでみんなで応募しようかという話になって、それがきっかけです。
−−受賞されて反響とかはありましたか?
そうですね、もちろん反響もありましたけど、自分自身の変化が大きかったですね。自分には子どもがいて、日頃絵本は読んでいたんだけれど、デジタルえほんっていうジャンルはあんまり自分とは関係ないものと思っていたんです。応募した企画も、このアワードのために作ったというよりも、もともと別のかたちでやろうと思ってた企画だったので。
そんな中、受賞したことによって自分のなかでデジタルえほんというカテゴリーがすとんと入ってきた。その変化が大きかったですね。
−−最初デジタルえほんに対してどんな印象をお持ちでしたか?
世間では、デジタルえほんって言ったときにiPadやスマホの中で、プログラムによって動くインタラクティブ性がある絵本、という風に定義されているんじゃなかなあという感じはしていました。でも、ぼくはデジタルの領域で絵本以外にいろいろ作っているというのがあるからですけど、デジタル=スマホ・パソコンという風にはならなくて。もっと広く捉えて、むしろその画面の中から出ていくものが面白いっていう考えはありました。
−−受賞された「話せる絵本 〜どうぶつほうもん〜」「路上絵本」も、そういった画面から飛び出す発想から生まれたものでしたね。
佐藤ねじさんはお子さんがいらっしゃるということで、普段の中で子育てとデジタルの関係で気をつけていることなどはありますか?
ひとによってはスマホに触ることを縛ったりとかはあると思うんですけど、ぼく自身が仕事的にもすごく触ってるので、だからっていう訳でもないですけどあまり変に避けることはせず、特に何もしてないですね。
むしろ子どもがどういう使い方をしているのかを見て楽しむというか(笑)。ああこういう風に子どもは触るんだとか、2歳児でもこのインターフェースは分かるんだとか、そっちの方に興味があります。
《第3回デジタルえほんアワード企画部門審査員特別賞受賞作品「路上絵本」》
子育てと創作活動
−−お子さんが生まれる前と後では、創作活動に変化はありましたか?
基本的には何も変わってないと思うんですけれど、子どもができてから3年一緒に過ごして考えることは、これはもうかなり違いますね。こども向けの制作に関しては、子どものインサイトというか、気持ちだったり、子どもを持つ親の気持ちが分かるようになったので、変化はあったと思います。まだ子どもがいない時は、だいたいこんなもんだろうと高をくくって、結果的に自分を含め大人が楽しめるような凝ったものにしようとしてしまいがちなんですね。だけど実際にはそんな必要はなくて、極論ただアンパンマンがぽんっと出ればそれだけで子どもは十分満足してくれるって場合もあるので(笑)。逆にあんまりやりすぎない方がよかったりするっていうことは、子どもが出来てから感じることですね。
違う土俵での戦い方
−−ねじさんと言えばアイデアメーカーという印象があります。ご自身のアイデアの特徴やテーマ、こだわりはどんなところだと思いますか?
「隙間」というか、「違う土俵で戦う」ということですね。みんなが集って注目している技術とか、流行のジャンルがあると思うんですけれど、あんまりそこで頑張る気が起こらないんですよ。どちらかというと、あまり人が注目していない「隙間」をみつけることに力を注いでいます。すごくクオリティの高い感動の3D映像!っていうのはまったく作ろうとは思わなくて、むしろその1/10の技術しかなくても、3Dの使い方を変えて軸をちょっとずらす、という考え方です。
そういうのを“ブルーパドル”って読んでるんです。パドルっていうのは水たまりのことです。ブルーオーシャンを見つけようっていうのは、例えばARが無かった頃にARを見つけるみたいなことなので、ぼくは技術者でもないのでできません。そうではなくて、逆にもう使い古された、散々やられつくされたと思われている領域の中から、「まだあったんだ!」っていう驚きを発見することに燃えますし、やりがいがありますね。
絵本もある種そういうジャンルで、伝統的なものだし、脈々と続いてきた歴史があるので、そこで戦うわけではなくて、絵本っていう文脈をインストールした上で、ちょっと違う配合をする。
ぼくの中での解釈としては、絵本は最低要素としての絵と文字がなんらかのかたちで存在していて、ちょっとしたフィクションや教えがあるものなんです。絵本の中には、どうぶつの鳴き声だけとか、日常の中のある一点をぽんっと置くような、これでいいんだってぐらいあっさりとしたものもありますよね。でも、こどもにとってそこから知ることってすごく多いんですよ。銭湯の絵本を読んで、銭湯に行きたいということがあったり、世界を知る最初の入口だったりする。
そうやって、絵本の定義を自分の中で発見していくと、絵本の最大公約数というか、どこまで省略していって絵本が成立するか、というところになるんです。実際考えていくと、隙間だらけのように感じるんですね。今回出した「路上絵本」もそうですし、あれだけじゃなくて、他にも実はまだいっぱいやりたいことありますね。
アイデアメーカーとしてのルーツ
−−そういった新しい視点でだれかを驚かせたい!という発想は、小さい頃に何かルーツがあったりするものなのでしょうか?
クラスで絵が上手いやつっているじゃないですか。そんな、一番絵が上手いやつにはぼくは絶対なれなかったんですよ。まあまあ上手いところにはいたんですけれどね。
絵がうまいやつが何で評価されるかといったら、ぼくの頃だったらドラゴンボールの絵を上手に書けるとか、そういう人がやっぱり人気が出るんです。ぼくはそこまでうまくなかったので、こそこそとオリジナルのマンガを書いてたんですよ。そのころから思っていたのは、いくら絵が上手くても、それは鳥山明先生の作品だと(笑)。それは鳥山明先生が偉いのであって、君はただ模写するだけのスキルがあるだけだ、と思っていました。その頃からオリジナルに対しての思いはすごいありましたね。
−−子どもの頃はどのように育ちましたか?
平々凡々とした家庭だったと思います。ぼくってほんと普通なんですよ(笑)。佐藤で、A型で、次男で、親は公務員で、勉強はまあまあの成績、マンガはドラゴンボール、音楽はブルーハーツとか聞いて。そんな感じでずっと普通だったんですけど、昔からアイデアを考えるのは好きで、変なことを言う子だったって、よくおばあちゃんとかに言われますね。
高校生ぐらいのときにデザイナーの道にいこうかなと思って、本をたくさん読んだんです。そのときに、たとえば『デザインの現場』などを通してクリエイターを知り始めて。
そのときに知った佐藤雅彦さんが、いまに繋がる一番大きな影響を受けた人です。佐藤さんは「考え方を考える」ということをずっと言っていて、新しい考え方の発想法を作れば、新しいものは生まれるっていう、その考え方自体にすごく影響を受けて、それはずっと脈々と続いていると思います。
『佐藤雅彦の全仕事』っていう本の後ろの方の巻末に、佐藤雅彦の発想法10コみたいなのがあるんですよ。はじめてそれをみたときには、「やった、手に入れたぞと!」と思ったんですけど(笑)、実際にそれを使って発想しても、あんまりいいアイデアが出なかったんです。
その時はわからなかったんですけど、それはあくまで他人の発想法で、自分にインストールして意味は分かっても、なかなか肌に合わないと使えなかったりするんですよね。
「普通」から5度ずらす
−−佐藤さんの中で「普通」とは一体どういったものでしょうか?
常識を知らないと非常識は作れないじゃないですか。デザインも、ちゃんとしたデザインを作れるようになるから奇抜なものも作れるし、その「ずらし方」が分かる。その構造や方式は、発想法にも全部通じていると思うんです。
奇抜な発想って、普通に対して180度逆転の発想みたいに言うけど、180度回ると意外と普通に見える。そうじゃなくて、5度ずらすとか、9度ずらすみたいな、そういうものの方がおもしろいかなあと。パッと見た感じ普通だけど、なんかおかしいみたいな。そういった「違和感」は、0度である普通を発見しないと、わからないと思うんです。
−−日々の中で、アイデアを出すために特別にしていることはありますか?
アイデアは、普段スマホで貯める場所を決めていて、そこに書き溜めたものを週末にノートに書き写すようにしています。ぼく、メモ魔なんですよ(笑)。ノート術とか、ああいうのが大好きなんですね。どうメモするかということにずっと常にライフハックを繰り返すというか、それ自体が楽しいんです。「INTERESKINE」は、アイデアメモそのものが一個のコンテンツになるんじゃないかなというひとつの実験ですね。自分で使えないなあというアイデアの一部をあのサイトに無料販売すればいいなあと。
《アイデア無料販売サイト「INTERESKINE」》
−−どういうときにアイデアを思いつきますか?
思いつかない時っていうのはなくて、思いつかないときはメモができない状態にあるときというか、そんな感じです。まあつぶやきに近いんですよね。いいつつぶやきはいつ思いつきますかって言われても言えないじゃないですか。
−−「さいごの世界大戦」や「今日は2011年3月10日かもしれない」など、社会派とも言える作品はどういった経緯で生まれたのでしょうか?
もともとは個人プロジェクトで、マイルールとして、佐藤なので3月10日になにか作ろうというのがあったんです、前の年は佐藤フィルターっていうのを作って。次になに作ろうかなってぼんやり考えた時に、そもそも3月10日って311の前だよなあと思って。
《いろんな場所で「佐藤さ~ん」と呼んで、どれくらい「佐藤」がいるか確認する「佐藤フィルター」》
けっこう震災に対しての思いはあったんです。でも、やっぱりああいったものを出すと、強い批判も当然来るじゃないですか。それに対してどきっとはしたんですけど、同時にやっぱり世に出すことはやっぱり責任があるんだということを再認識しました。いまはネットでみんな軽く世に出しちゃうから、その感覚が薄れがちだと思うんですけど。自分の中に軸がないといけないなっていうことはすごく思いました。
ぼくは僕自身をアーティストという風に定義していないんですけど、こどもができたこともあって、何か社会的なことに対してぼんやり思うものもあったんです。それは自分の中でツイートに近くて。ちょっとおおげさなツイートというか。だから「さいごの世界大戦」も、あれはRTなんです。みうらじゅんさんの言葉があって、めっちゃいいじゃんって思って、RTをした。その仕方をちょっと大袈裟にした。
《「今日は2011年3月10日かもしれない」
「明日」「無事」「福島」「おにぎり」のツイートを地震の前後で比較することができる。》
《「さいごの世界大戦」》
ぜんぜんぼくはそこに深い知識があるわけでもないし、批評家みたいなことはできないですけど、そこに身を投じていくことで、思考が深まるというのもあるし、逆にまったく触れないのも変だなって感じがします。
「絵本なのか何なのか分からないけど、変なものをちょこちょこ出してるおじさんがいるね」っていう、そういうのになりたいですね(笑)
−−これからの目標がありましたらお聞かせ下さい。
こどもと一年に1回作るとか、何個かシリーズがあるんですけど、絵本も今後やっていきたいですね。デジタルえほんアワードがあったおかげで、そのジャンルが自分にインストールされたので。たとえば10年ぐらいやり続けてると、何かひとつ磁場が生まれるんじゃないかと思います。「絵本なのか何なのか分からないけど、変なものをちょこちょこ出してるおじさんがいるね」っていう、そういうのになりたいですね(笑)。
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佐藤ねじ式発想法についてのお話を聞くことができた、とても貴重なインタビューとなりました。クリエイターの方には参考になる部分たくさんあるのではと思います。
なんと、その後「路上絵本」の企画が実現化されたとの嬉しいお知らせを頂きました。今後はワークショップの展開なども思案中とのことです。
わたしたちをクスッとさせてくれる佐藤ねじ式アイデアの、さらなる活躍を期待しましょう。
(ほりあい)
※第2回デジタルえほんアワード審査員特別賞「話せる絵本 どうぶつほうもん」過去の紹介記事はこちら
Hello everyone!
We’re Digital Children’s Book Fair Executive Committee in Tokyo.
Thank you very much for waiting!
Here is our report on Digital Children’s Book Fair 2014 held on August 29th -30th along with Workshop Collection 10!
We had wonderful 2days this year again that were filled with lots of children’s smile in our 10th Workshop Collection at the new venue, Aoyama Gakuin University.
It was visited by approximately 57,000 people this year!
As you can see from the picture, there were 32 tablets including iPads and Android tablets on small 6 tables for children and higher tables for adults beside the wall.
We divided apps according to continents that their developers are from so that children could easily get to know each app. There were 3 groups; a table for Asian and Oceanian apps, 2 tables for North American and South American apps, and 3 tables for European, the Middle Eastern and African apps.
The screen with flags were displayed on each tablet to show which apps it contains like these pictures below.
Thanks to all who supported and provided the apps for us,
We proudly displayed about 250 apps from 40 countries this year!!
So we prepared a simple leaflet with information of the apps for this fair to
give a chance for all visitors to reach each app and enjoy them at home.
Hope it was a good present for the visitors!!
Furthermore, we gave our face painting sticker with our logo together!
We were really happy to see children with the sticker on their cheek!
I guess you could imagine how adorable they were!!
To be honest, we had a lot of anxiety with excitement
before it opened because it was the last weekend of
summer holiday in Japan…..so we were wondering…
Will there be any children to come and visit our fair after all?!
But soon after it opened, we realized the tables were immediately occupied!!
We were so relieved and happy to see the view!
Let’s see the pictures and let us tell you how children had fun with the apps!
Some children were playing apps with their parents…
“This is fun!!”
“Which one? I wanna try that one too!”
Some children were sharing good apps with their friends and enjoy them together…
Some children were fully concentrating on just only one app by themselves…
And some children tried as many apps as
possible… 20apps were the best record!
This picture was taken in AR corner. Many children enjoyed seeing their picture became 3D!
Surprisingly, some parents downloaded the app just right there and tried it with their own tablets.
Little children were fascinated with this app with its toys with their grandfathers and grandmothers, e.t.c…
Each kid had each way to play apps but all of them seemed to have a good time!
It was really impressive for us to see each kid gradually getting familiar with each app although they found difficulties for the languages and characters at the beginning.
We can say it’s one of the good points of being digital that you can learn by sensation!
By the way, I can’t forget to say this whole room was a full of active children in a whole day because of many activities in this room!
Visitors could see the Digital Ehon Award ceremony,
try the AR work called “PETER PAN” developed by Digital ehon Co., Ltd and Dai Nippon Printing Co., Ltd.
and participate in “ Ehon-making workshop” produced by students from Joshibi University…e.t.c
We hope these experiences will realize the children in this electronic age someday that there’re many different languages and cultures in the world and this fair could be an opportunity for their parents to expand children’s abilities as well.
Please let us inform you again about our next exhibition in October in the end.
Digital Children’s Book Fair 2014 at amu will be held on October 8th – 13th, 2014
at a multipurpose creative space “amu” in Tokyo.
We’ll make a good use of previous experience in August and try our best to create more comfortable place where both adults and children can enjoy the apps.
We’d like to thank all of visitors, developers and the people who supported this fair again!
Please give us your continuous support for “amu”, Digital Ehon Co., Ltd and Digital Children’s Book Fair!
Thank you very much!
Please check and see the pictures at the fair ⇒Facebook
Digital Children’s Book Fair Executive Committee
こんにちは!国際デジタルえほんフェア運営事務局です。
前回同様国際デジタルえほんフェアから出張して、今日はこちらにお邪魔します。
さてさて、大変お待たせ致しました。
今回は、先月8月29日(金)、30日(土)に行われました、
国際デジタルえほんフェア2014@ワークショップコレクション10の様子をご紹介いたします!
今回で10回目を迎えたワークショップコレクション。
青山学院大学という新しい会場を舞台に、今年もたくさんの子どもたちの笑顔があふれる2日間となりました。
来場者は二日間でなんと5万7千人!
その、ワークショップコレクション10の1会場で行われたのが、国際デジタルえほんフェア2014であります。
今回は立派な教室の一角にスペースを頂き、デジタルえほんやARコーナーなども設置。
iPadやAndroidタブレットは合計32台、こども用の机上に端末を、
大人用のiPadも壁の机にずらっと並べました。
こども用の机は全部で6台。机1台につき、4台の端末を置いています。
こどもたちが遊びやすいよう、端末の中身のアプリは大陸毎に分けて、
アジア・オセアニアのアプリが遊べる机、
北・南アメリカのアプリが遊べる机、
ヨーロッパ・中東・アフリカのアプリが遊べる机…と、3パターンにゾーニング。
自分がどの大陸のアプリを遊んでいるのかわかりやすいよう、待ち受け画面はこんな感じに設定しました。(クリックで拡大)
さてさて、今回集まった世界のアプリの数は
なんと、
40カ国250作品!!!
出展者の皆様、本当にありがとうございます!!
より多くの子どもたち、親御さんにわかりやすく伝えるため、
また帰宅してもデジタルえほんフェアを楽しんで頂くため、
今回の出展アプリが全部載っているパンフレット、ワーコレ版をつくりました。
こちらは来場者の方へプレゼント!
そして更に子どもたちには、ロゴが入ったフェイスペイントもセットであげちゃいました。
これをつけた子どもたちが、またかわいいんです!
そんなこんなで結構良い感じに設営が終了。
あとは子どもたちを待つばかり。
夏休みも終盤、はたして子どもたちは来てくれるのか…!?
ついにOPEN!
・・・と同時に、
すごーい!!
さてさて、気になる当日の様子を写真で振り返ってみましょう!
小さい子がお母さんと一緒に遊んでます。
何か反応がある度にリアクションしていました。
良い笑顔ですね。
「わーこれ面白い!」
「えーどれぼくもやる!」
と、友達同士で面白いものを教えあって一緒に楽しむ子たちや、
ひとつの作品に集中してずっと遊ぶ子、
いろんなアプリをとにかく試して遊ぶ子も。
20個遊んだ!という子もいました。最多記録です。
こちらはARコーナー。自分のぬりえが立体化する事に大喜び。
その場でアプリをDLする親御さんも。
小さい子には、積み木感覚で遊べるアプリをご案内。
おじいちゃんおばあちゃんと一緒になって、夢中で遊んでいました。
遊び方は人それぞれ、ただ、みんな、とっても楽しそう。
それぞれが普段見慣れない文字や言葉に最初は躊躇しながらも、
試しているうちに、遊び方を自分で見つけて、遊んでいく姿が印象的でした。
「感覚で掴んでいく」というのが、デジタルの強みなのかもしれませんね。
また、同会場では、デジタルえほんアワードの表彰式が行われたり、
デジタルえほん社・大日本印刷株式会社様と共同開発のAR魔法のえほん「ピーターパン」を体験できたり、
女子美術大学の学生による「えほん作りワークショップ」があったり・・・、
とても活気のあるデジタルな場となりました。
今後、ますますグローバル化、デジタル化が進んでいく社会で生きていく子どもたち。
いつかどこかで、世界のデジタル作品に触れたこの日の経験が、
言語の違いに気付くきっかけであったり、
違う文化への気づきになったりと活かされることを願います。
また、保護者の皆さまにとっても、
お子さんの可能性のひとつを拡げる、小さくても大切な気づきの場となっていれば、とても嬉しく思います。
当日はとても大勢の方に足を運んでもらった、良い展示になりました。
参加者の皆様、出展者の皆様、誠に誠にありがとうございました!
さてさて、反省点や改善点もありますが、既に巡回展が決定しております!
恵比寿にある多目的クリエイティブスペースamuにて、
2014年10月8日(水)~10月13日(月)に開催予定です。
今回の経験を活かし、大人も子どももさらに楽しめる空間になるよう、より一層励んでまいりますので、
引き続き、多目的クリエイティブスペースamu、デジタルえほん社、および国際デジタルえほんフェアをどうぞ、宜しくお願い致します!
当日の様子はこちら→Facebook
★余談★
むかいのブースは今をときめく話題のPepperくんでした。
ちゃんと受け答えしたり遊んでいたり、未来がすぐそこまで来ているなと思いました。
国際デジタルえほんフェア 運営事務局
こんばんは。
本日は、前回に引き続きデジタルえほんアワード過去受賞者のインタビューをご紹介したいと思います。
本日ご紹介するのは、前回作品部門グランプリを受賞した『めがねくんはちょうちょにあこがれる』の作者である宇野侑佑くんと、宇野くんが所属する竜海中学校パソコン部の顧問である神谷先生のインタビューです。
数ある応募作品の中から見事に選ばれた中学生の作品である『めがねくんはちょうちょにあこがれる』は、「Flash」を使って制作されたデジタルえほん作品です。
この作品では、主人公であるめがねくんがある日ちょうちょに憧れを抱き、ちょうちょになれるように努力する姿が描かれています。
宇野くんのパソコン部での日々や、顧問である神谷先生の指導方法などの話を通して、
こどもとデジタルの“今”や、これからについて考えさせられるインタビューとなりました。
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《宇野侑佑くん、神谷先生インタビュー》2013/03/09(聞き手:高木浩子)
竜海中学校パソコン部のこと
−−今回、めがねはちょうちょにあこがれるという作品を作っていただいきましたけれど、なぜ作ろうと思ったのか、作る経緯を教えて頂けますか?
宇野:えーっと、まずパソコン部でアニメーションとか作ってるので、それの応募するために作ったものです。
——デジタルえほんアワードのことは知ってて、そのためにつくられたということですか?
宇野:今回は、最初に出そうと思っていたところに出せなくて。それで、まだこのデジタルえほんアワードが募集してたので。
——ああ、なるほど。デジタルえほんアワードを知ったきっかけって何でしたか?
宇野:先生に聞きました。
宇野侑佑くん(第二回デジタルえほんアワード表彰式にて)
——今回は部員のみなさんがたくさん作品を応募していただいたのですが、普段みなさんで一緒に作品を作っているんですか?
宇野:はい、毎日。
——放課後に?
宇野:はい。
——パソコン部では、アニメーションを作ったりする他にどんな活動をされているんですか?
宇野:プログラムを使ってゲームを作ったり。いまは文化祭に向けて3Dのカートのレースを作っています。
——すごいですね、一から自分でプログラミングして作る感じなんですか?
宇野:はい。まあ共有フォルダにある他の子がつくったものとかも使ったりして。
——なるほど。覚えるのは簡単でした?使いこなすまでにどれくらい時間ってかかりました?
宇野:えーっと。
神谷:3Dは最近やり始めたんだよね。その前まで組んでるプログラムはどうやって覚えたの?
宇野:先輩とかからいろいろ教えてもらって。あとは自分で作りたいプログラムを自分で組み合わせて。
神谷:分かんない時はどうしてたの?
宇野:先生、あとは部員の友だちとかに聞いて。
——みんなと協力しながら。
宇野:はい。
——すばらしいですね。プログラミングをやろうと思ったきっかけというか、何がきっかけでパソコン部に入部したんですか?
宇野:最初はゲームが好きで。この竜海中に入って、パソコン部があるのを知って。入部して、そこでいろいろアニメーションとかプログラムを作って、作りながらどういうふうにできているのか、っていうのが面白くて。
——その仕組みが知りたかったと。
宇野:はい。
作品が生まれるまで
——作品の話に戻るんですけれど、今回の作品のメッセージというものはありますか?
宇野:最後に、ものを大切にするっていうことが書いてあって、こどもにもものの大切さを伝えられればなあと。どんなものでも、綺麗になれるっていう。
−−めがねくんが努力してちょうちょになっていくお話だと思うんですけれど、ストーリーはどうやって考えたんですか?
宇野:最初はお母さんが、めがねが飛んだら面白いんじゃないって。
——お母さんと話しながら、アイディアが生まれて。
宇野:はい。で言われたあとにいろいろ考えてできたものです。
——どれくらいの期間で作ったんですか?
宇野:一ヶ月半か、二ヶ月くらいかな。
——すごいですね、いまの中学生は、環境が整っていていいですね。じゃあ、工夫した点だったりとか、大変だった点、楽しかった点、作品のおすすめポイントとか、ちょっといろんな面を教えて頂けますか?
宇野:まず、おすすめするところは、さっきも言ったように、ものを大切にするっていうところ。あと、物知り辞書っていう本を探すところで、自分の世界が入っているっていう風に作ったことと、あとは分岐点とかを作ったところ。
——大変だったところってある?
宇野:辞書を探すところで、そこでボタン操作をひとつひとつ作るのが時間がかかったりとか。あと、ボタンを押してめがねが飛ぶところ。
——ああいうインタラクティブな操作を入れるのも宇野君のアイディアですか?
宇野:あれはもともと先生がこういうのを取り入れたら、って。
神谷:物知り辞書は違うよ。先生は何も言ってないよ。
宇野:そうだ、分岐とかは作ったらって。
神谷:それは宇野君のだよ。まだ締め切りが来るまでは、もっといろいろできるんじゃないのって言って、あえて合格にしなかったんです。それで、自分たちで考えさせたんです。それじゃあどうするの?っていう感じで、こうしなさいとかはあんまり言ってないです。
——読み手のひとが参加できる参加型のデジタルえほんだなあって、そこが評価のひとつでした。
中学生とケータイ、パソコン
−−作品の話からは逸れるんですけれど、宇野君はパソコンやケータイを普段使ってると思うんですけど、いつ頃から使ってるんですか?
宇野:ケータイとかは小学三年生ぐらいから。
——そんなに早く!すごいですね。子どもケータイ?
宇野:はい、子どもケータイから。
——今は何を持っているの?
宇野:今は普通のケータイで。
——ガラケー?
宇野:はい。
——スマホにしたいとかは?
宇野:あります。
——(笑)
宇野:でもお母さんが、スマホはまだちょっといろいろなにか問題がいっぱいあるらしんですけど、それを全部解決したら買おうっていう。
——パソコンは持ってる?
宇野:買いました。
——いつ頃買ったの?
宇野:一週間前に。
——(笑)最近だね。
宇野:はい。
——じゃあ作品はずっと学校のパソコンで作ってたんですか。
宇野:はい。
——なるほど。これからそれで何をしたいですか?
宇野:高校になったら、それでアニメーションとかを作って投稿したいので、ソフトとかを入れて、いろいろ投稿したいです。
——いいですね。これからも続けてデジタルえほんを作っていきたい?
宇野:はい。
——他に何か作ってみたい作品とかってありますか?
宇野:ぼくはプログラムがやりたいので、ゲームとか。
——将来はプログラマーになるんですか?
宇野:はい。
——良いですね。ぜひがんばってください。
神谷:ちょっと教材みたいのは作ったりしたよね。
宇野:あ、数学を使ったシューティングのゲームを。
——そうなんですね。今回のデジタルえほんアワードの作品の中で、数学の問題をゲーム形式でやった作品もあったりして。デジタルえほんって絵本だけに特化したものではなくて、子ども向けのデジタル表現を総称してデジタルえほんって呼んでるんです。だから、今回グランプリだった『つなげっと』もゲームっぽくて、参加する人が楽しいものでしたね。
神谷:ああいうのを混ぜてもよかったのかもしれないですね。
“もっとこどもの創造力を発揮させる道具としてコンピュータを使いたい”
神谷耕一先生(第二回デジタルえほんアワード表彰式にて)
——じゃあ、次は先生にお話を伺いたいんですけれども。今回たくさんの部員の方にご応募いただいき、ありがとうございます。
神谷:これは大人がやるコンクールだからだめだろうって言いながら出した感じで。審査員のひとたちがこのメンバーの人たちなら、見てくれればいいやって。
——ありがとうございます。子ども向けのデジタル表現をデジタルえほんとして謳っているんですけれど、さっき茂木さんがおっしゃっていたみたいに、誰もがデジタルえほんを作れる時代であると思うので、中学生のみなさんにこうやって作品をご応募いただけたことは、すごく私たちにとってハッピーなことでしたし、作品自体すごく良かったので、こういう風に賞を授与させていただきました。普段はどういう活動をされているのか、先生からもお伺してもいいですか?
神谷:アニメーションとプログラムがメインです。でも、自分が今の学校のパソコン部の顧問になった時は、部員がパソコン室でインターネットでみちゃいけないページとかを見たりして遊んでて、パソコン部なのにパソコン室に入れてもらえませんっていう状態で。なぜそうなっちゃうのかっていうのは、たぶん目的がないからだと思うんです。で、本当は何をやりたいの?って聞いたら、できないと思うけど本当はアニメーションとかプログラムがやれたらいいなって言ってたので、それじゃあやろうかって。
それからフラッシュを入れてやり始めて。今は、子どもたちが3Dに挑戦したいですって言うので(笑)、無料のソフトをいくつかばーっと並べて、これは簡単で日本語だよ、これはいろんなことができるけど英語だよとか、全部条件を言って選ばせたんです。そしたら
この子たちは英語の一番難しいソフトを選んで。でもいまは頑張ってやれちゃってますよ。
——すばらしいですね。
神谷:英語は得意ですか?
宇野:苦手です。
——(笑)
神谷:プログラム組んでるのはいつも日本語ですか?
宇野:英語です。
——そうだよね。
神谷:でも今は組めちゃうもんね。
宇野:はい。
神谷:授業の英語とは何が違うの。
宇野:えーっと、楽しくないって感じ。
(一同笑)
神谷:英語の先生に聞かせられないな(笑)。プログラムの英語は楽しいの?
宇野:楽しいです。
神谷:自分も、コンピュータを使って学校でエクセルとかワードの使い方だけをやるのはのはちょっと違うかなって思っていて。うちの部活では、こどもが作りたいって言ったらそういうものができる、もっとこどもの創造力を発揮させる道具としてコンピュータを使いたいなって。今回ワークショップコレクションも見て、デジタルじゃないものもいっぱいあるんですけど、なんとなくそういうところで共通してるところがあるなって想いは感じました。
——まさにそれはうちの代表の石戸が目標とするところです。パソコンを、ツールとして表現活動に生かしていくという。
神谷:自分も実はキャンバスの活動をネットで何度か見させて頂いていて。
——そうなんですか、ありがとうございます。
神谷:石戸さんのインタビューも見ていて。だから、本当にそういう意味でも楽しみだったんです。自分は教育大学で、こんな大げさじゃないんですけど、何百人かこどもを呼んでこども祭りっていうのをやっていて。今日見ていて、今のパソコン部でのデジタルツールへの思いと、昔やってたこども祭りへの思いを両方感じながら、こんな規模の企画ができるんだな、すごいなあって思っていました。
——ありがとうございます。まさに、デジタルは表現方法の1つですからね。それが普段の子どもたちの日常の中に入っていければいいなって、こういった活動をやらせて頂いているんです。
神谷:本当にその通りなんです。アラン・ケイさんが、コンピュータリテラシーというのはプログラミングの能力のことで、こどもが自分で気軽に作りたいものを作って、それをみんなで共有できることだと言っていて。コンピュータとか、こういうデジタルデバイスの本当の意味はそこなのかなって思います。自分もiPhoneとか出る前に、昔マイクロソフトがウィンドウズモバイルというのをやってて、使いたいのを作ったりしていたんです。そんな風に、使いたいものを自分で作れるのっていいなって。これがもっと手軽にできる、そういうツールがもっと作られるといいのかなって思っていたんです。だから、日本中でそういうことができるって思いを持ったこどもたちが全国で繋がっていったら楽しいだろうし、日本も変わっていくきっかけになるかなあと。
——ひとつひとつの活動が大事だと思っています。なにか学校の授業で使われたとかはないんですか?
神谷:個人的には自分で作った教材を社会の授業で使うことがあったり、岡崎市でマルチメディアの自作教材を作っていたりしていて、そういうものを作ったりはしてるんですけれど、岡崎市は、子どもたちみんながタブレットのデジタル教科書をもってるっていう状況ではないですね。で、自分はデジタル教科書よりも、ノートを新しいかたちにしたいと思っているんです。教科書とかノートって前から順番に、っていう風になってるじゃないですか。頭の中の知識って、本当はネットワーク上の相関図みたいな感じで、立体構造で、あとから付け加えられたりするものだと思うんです。そういうのは、紙では表すことはできない。そんな、頭の中で考えるままどんどん付け足していけるような、立体的な構造を持つノートみたいなものができたら、新しいかたちのこどもの学習に役立つんじゃないかなと思います。
——そういう思考が大事なんだと思います、これからの時代。
神谷:黒板もそうなんですよね、こどもがいる前で言うのもあれなんですけど、板書計画っていうのがあって、ここにこれ書いてとか、始めから決まったものを書く予定が出来ちゃう。そうじゃなくて、やっぱり子どもの意見が出てきたら、本当はこどもたち同士の意見を動的に絡み合わせていける、そこに焦点をあてないといかんかなあと思っていて。ノートでも黒板でも、それがやれるのはデジタルじゃないかなあって。
——はい、そうだと思います。(宇野くんに)先生は厳しいですか?
宇野:かなり。
神谷:作品作るなら、締め切りの最後までさせた方が、やっぱりこどものためになるし、もっとこどもが考えるんじゃないかって思うんです。でもほっとくとやるんですよ、みんな。自分たちで考えなって言えば。考えて動けると思うので。学校はあんまり過保護になっちゃうといけないから。
——鍛えられてますね(笑)
神谷:いま一番頷いたね(笑)
——すばらしいと思います。良い先生に巡り会えて良かったですね。
宇野:はい。
神谷:言わされたね(笑)
——先生は、今後どういう活動をしていきたいとお考えですか?
神谷:この子たちがやりたいことをできるように、こないだは3Dやりたいって言ってたので、一応二十台分のパソコンにふたつのソフトを入れたんですが、まあそういう作業ですかね。
——環境整備というか、プラットフォーム作りというか。
神谷:そうですね、それはこどもたちに責任もって、自分たち同士で恊働してなにかつくりあげるっていうのをやって欲しくて。毎年文化祭の時は、最後が大変で、うまくいかないんですよ。みんなで一緒に作るとなると、個人で作るのとは違って、この部分は私が作ってこの部分はわたしが作ったら、やっぱりそうじゃないよ、とかなって。でも、それは将来のためにやらないといけない。みんなでコラボレーションしていく、一緒になにかを作り上げてく、個人だけで好きなもの作るだけじゃなくて。そういうことをこどもたちができるようにしたいなと思います。
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学校などの教育現場に限らず、こどもたちの生活の中にデジタルが持ち込まれることに関してはさまざまな議論が交わされていますが、純粋にプログラムに興味をもち、それに打ち込んでいる宇野くんの姿や、これからのこどもたちへの教育のためにデジタルの力を活かしたい願う神谷先生の言葉から、デジタルのもつポジティブな可能性を強く感じました。
デジタルえほんアワードでは、こどもたちの作品も募集しています。
プログラミングなどを使って作品を制作されているみなさんのご応募、
お待ちしております。
(ほりあい)
『めがねくんはちょうちょにあこがれる』
URL:http://www.oklab.ed.jp/ryukai/ehon10.html
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※デジタルえほんアワードでは応募作品を募集しています。
募集部門は、<企画部門><作品部門>の2つ。
こんなデジタルえほんがあったらいいなといったアイデアをお持ちの方は<企画部門>
ぜひわたしのデジタルえほんを見て欲しい!という方は<作品部門>にご応募下さい。
各部門グランプリには賞金20万円、準グランプリには5万円が贈呈されます。
ご応募いただいたものは、豪華8名の審査員によって審査されます。
応募締め切りは6月20日(金)。
皆様のご応募をお待ちしております!
詳細はデジタルえほんアワードオフィシャルサイトホームページをご覧下さい。
【第三回デジタルえほんアワード開催概要】
■ 募集部門 : 企画部門、作品部門
■ 募集期間 : 2014年4月8日(火)〜2014年6月20日(金)
■ 賞 典:企画部門グランプリ(賞金20万円)
作品部門グランプリ(賞金20万円)
企画部門準グランプリ(賞金5万円)
作品部門準グランプリ(賞金5万円)
各部門審査員特別賞 など
■ 審査基準
審査は以下の3つの要素に基づき行います。
・たのしい!
(こどもたちを魅了し、夢中にさせる楽しさ)
・みたことがない!
(これまで出会ったことのない新しい表現)
・世界がひろがる!
(こどもたちの想像力・創造力を育み、世界を広げてくれるしかけ)
≪デジタルえほんとは?≫
タブレット、電子書籍リーダー、電子黒板・サイネージ、
スマートフォン等テレビやパソコン以外の新しい端末を含む
子ども向けデジタル表現を総称して「デジタルえほん」としています。
■ 審査員
※敬称略・五十音順
・いしかわ こうじ / 絵本作家
・角川 歴彦 / 株式会社KADOKAWA取締役会長
・香山 リカ / 精神科医・立教大学教授
・きむら ゆういち / 絵本作家
・小林 登 / 東京大学名誉教授・国立小児病院名誉院長
・杉山 知之 / デジタルハリウッド大学学長
・水口 哲也 / クリエイター・プロデューサー、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(Keio Media Design)特任教授
・茂木 健一郎 / 脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学研究特任教授
2014年7月開催の審査会を経て、2014年8月29日、30日開催の
「ワークショップコレクション10」 (主催:NPO法人CANVAS)内にて
結果発表及び表彰式を行います。
主催:株式会社デジタルえほん、NPO法人CANVAS
協力:愛知県立大学情報科学共同研究所
中京大学工学部宮田研究室
デジタルハリウッド大学
武蔵野美術大学
東北芸術工科大学
札幌メディアアーツラボ
女子美術大学
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
東京大学大学院 情報学環・福武ホール
東京コンテンツプロデュースラボ
早稲田大学国際情報通信研究センター
■公式サイト
http://www.digitalehonaward.net
こんばんは。
第三回デジタルえほんアワードの締め切りが近づいています。
本日は、過去開催時に受賞された作者さんのインタビューをご紹介します。
えほん社は、前回のデジタルえほんアワード表彰式の後に、作者の方々にインタビュー実施しました。
本日は、第二回デジタルえほんアワード作品部門審査員特別賞を受賞した『ひとりぼっちのりく』の作者である、りく企画の木立じゅんこさんのインタビューをご紹介します。
『ひとりぼっちのりく』は、東日本大震災で被災してしまった一匹の犬が主人公のデジタルえほんです。
この作品の生まれた背景には、震災のあと、親として、大人として、こどもたちに何を伝えたらいいのかという、木立さんの真摯な思いがありました。
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《りく企画 木立じゅんこさんインタビュー》2013.3.9(聞き手:たねおいめぐみ)
絵本の誕生日プレゼント
——まず、なぜデジタルえほんをつくろうと思ったのか、というところからお伺いしたいなと思うんですけれども。
木立さん(以下敬称省略):なぜつくろうと思ったのでしょうね(笑)
−—もともとは紙のえほんを描かれたりしていたんですか?
木立:ああ、そうです。今回応募させていただいたのも、もともとはこどもの誕生日のためだったんです。
前回作った時は、長男の7才の誕生日で。今回の『ひとりぼっちのりく』は、家の犬の1才の誕生日の時のえほんなんです。
木立じゅんこさん(第二回デジタルえほんアワード表彰式にて)
−—では、もう何冊もつくられているんですか?
木立:はい。すごくたくさんというわけではないですけれども、6冊くらいかな。
——それは全てデジタルえほんというかたちで?
木立:いえ、紙に描いてそれをお誕生日プレゼントとして製本して。
製本の仕方っていう本が出てるんですよね。そういうのを見て、のりをつけてぎゅっとやって。
そこで、絵本をスキャナーにとって、簡単にそれを電子えほんにできるツールをネクストブックの方が無料で出してくださったんですね。これ使えば簡単に電子えほんになるね、じゃあやってみよう!って。
——じゃあ、デジタルえほんアワードに応募しようと思ったきっかけは何だったんですか?
木立:それは父ちゃん(旦那さん)がこんなのあるよ、出してみようよって言ってきて。じゃあ出してみようよって(笑)。
元々、家の人はアップルの製品を売ってる人間なので。それで、なにかで見たらしくて。私はどっちかというとずっとワークショップコレクションの方が気になってて、じゃあついでにと(笑)。
“こどもたちが大人になったときに、必ず残っていて欲しいんです。”
—ではお作りただいた作品についてお伺いしたいんですけれども。事前にいただいたエントリーシートで、今回の作品をお作りになったきっかけが書かれていたんですけれども、改めておうかがいしたいなと思いまして。
木立:ああ、はいはい。なんて書いたんでしたっけ。(笑)
——東日本大震災があり、というようなお話ですかね。
木立:ああ!ね。震災のときに、ボランティアさんがすごい時間もお金も体力も使って、犬猫の救出のためにがんばってらっしゃるのを、冊子でもらったんですよね。で、それを読んで息をのんでしまって。これをこどもたちにどう伝えたらいいのだろうと思ったんです。
——作品は、自分のお子さまのためのものになるんですよね、毎回。伝えたい方がはっきりいる上で作られている。
木立:そうですね。実際に津波があって、バアって流されていく映像がもろに画面に映ってしまって。こどもたちが岩手の三陸を旅したときに優しくしてくれたあのおばあちゃんたちも流されたって聞いて。
映像ってもろに目に入るじゃないですか。長男は、目に入った映像がすごい焼き付いてしまう人なので、止めてって言われて止めざるをえなくて。その被害の状況っていうのは、大人は刻々と今何が起きているっていうことは知っているんだけど、こどもには伝えきれなくて。
犬も9匹いたんですけど、9匹のうち8匹が死んだんです。あのひと(りく)だけが生き残って。お母さんもどうなったかもう分からない。もう飼い主さんもいない、兄弟も8匹みんな死んだってことを、なんでもショック受けてしまうこどもに、どう伝えたらいいのかなと。
——はい。
木立:それで、ちょうど1才の誕生日のお誕生日プレゼントというかたちで、ショックじゃないシーンだけにしてえほんにしてみようかなって。
でも、かなり削ったんです。ちょっとこどもには見せられないって。
途中で、海に燃えてる家が映ってるシーンがあったんですけれど、それはやめた方がいいんじゃないかなって。だから短くなってるんです。
−—読ませていただいたときに、辛いとか嫌な思い出みたいなところが全然蘇らなかったというか。
心が温まるじゃないですけれども、ほっとしたというか。その感想が適切か分かりませんが、そういう印象でした。
木立:それが一番うれしいです。ありがとうございます。そうおっしゃっていただけて。
——敏感なお子さんだと、私とまた受け取り方も違うかもしれませんね。
木立:そういう子には見せられないかもしれませんよね。でも、書かなければ忘れられてしまうことだし、犬の一生なんて短いし、そんな犬もいたね、ぐらいになってしまったら、起きたことが全部こどもの記憶から消えてしまう。
こどもたちが大人になったときに、必ず残っていて欲しいんです。
デジタルえほんをつくる
−−では、事前におうかがいしたいなと思っていたことをいくつか質問させていただければと思うんですが、今回作品を作るにあたって苦労した点とか、工夫した点とか、実現したいけどできなかった点などはありましたか?
木立:実現したいけどできなかったのは、もうどっさりです。例えば、ゴミの中で寝ているシーンは、動いて雪が降ってくればいいなとか、音をもっといれたかったなとか、声を入れたいとか。いろんなこと思うんですけど、それを録音するっていう技術もなくて。そのネクストブックさんが出してらっしゃるツールっていうのは、もっといろんなことができるんですけれども、それを全部消化して、それを反映させるにはもう手一杯で。
−−技術的に簡単に作れるツールなどが出ると、よりいろんな方が参加できますかね。
木立:そうですね。やりたいっていう気持ちの人はいっぱいいるんだと思います。
——先ほど、(デジタルえほんアワード表彰式で)茂木さんもおっしゃられていましたが、デジタルえほんはこどもに良くないって言われているけれど、そんなことないと。実際にお子さんがいらっしゃって、デジタルえほんというものをこどもが読むということに関してはどのようにお考えでしょうか。
木立:最近、下の子が目悪くなってきたので、近くで見てばっかりじゃなくて離してとは言ってるんですけど、どうなんですかね。いろいろ描いてみて、こんなの作ったんだけどう?って言うと、よその人は紙の絵本で見たいって言うんですね。画面をめくるのは面白くないそうなんです。紙の手触りでめくりたいと。それをこどもに伝えたいって、みんな思っているとこるがあるので、デジタルえほんにする場合はそれとは全然違うものじゃないとだめですよね、きっと。
でも、iPadの画面に星空が映るってだけでも、最初感動しませんでした?
新しいツールがあれば、どんどんいろんなことできておもしろいと思うんです。
−−紙のえほんとデジタルえほんは、全く別物かなと思っていて。新しい文化というか、また別の表現の媒体かなと思ってるんですけれども。
木立:そうですね。そう思います。さっきの宇野くん(作品賞受賞者)みたいに、そういう文化の中で育った人たちがもっともっとすごい発想をしていくんですよね、きっと。
“例えば無菌室の中にいて外に出られないようなこどもには、タブレットなら入れることができる”
——今のお話と繋がるかもしれないんですけれども、デジタルえほんに感じている可能性についておうかがいできたらと。
木立:全然違う話になるんですけれども、例えば無菌室の中にいて外に出られないようなこどもには、タブレットなら入れることができるので、すごくいろんなことができるかな、なんて思ったりします。
——たしかにそうですね。
木立:元々私たち、病院街の横に住んでいたので。清瀬とか、となりのトトロのお母さんが入院していた辺り、全部病院街なんですね。で、難病で外に出られないというこどもたちがいっぱい病院にいるじゃないですか。そういう人たちにとっては、特にこういうのが武器になるかななんて。
——本当ですね。
木立:この間、山寺宏一さんが宮城の方のこども病院で、アンパンマンでいっぱい楽しませてあげたんだよって聞いて。ボランティアで行かれたそうなんですけどね。そうやって来てくれたときはいいんだけれど、そうじゃない普段は、いろんなものを持ち込みたくてもバイ菌がついているといけないだとかあるときに、こういうのはとても便利ですよね。
“びっくり箱みたいなものをつくりたいと思いません?”
——では、これは最後のご質問にしようと思うんですけれども。これからまた次、ご自身の作品としてこんなのつくってみたいとか、技術的にできることが増えたらこんなの作ってみたいなとかありましたら、教えていただけますか。
木立:えーっと、写真とかいろいろ連動して、画面が思ったとおりに動くんじゃなくて、全然見てる人が思わないような動きができて、こどもがびっくりしたら面白いなあと。こどもたちをびっくりさせるのって、面白いじゃないですか。びっくり箱みたいなものをつくりたいと思いません?
——素敵ですね。
木立:普通に触ってて、予想した通りの動きをしたらつまらないじゃないですか。
−−こどもたちがどうやったら楽しいんだろうと、その通りに動けるように、ていう作品が比較的多いような気もしていて。こどもがいかに動かしやすいかとか、反応があるかとか、こども様じゃないですけれども、そういったものが多いかなと。
木立:そんなに上品じゃないので、こどもが嫌がること好きなんですよ(笑)
−−今のお話うかがって、「え!なんで?なんで?」というようなものに、こどもは前のめりに取り組むかもと思いました。
木立:例えば、お人形とか出して可愛く動かしてあげるよりは、端からそっと動かしてぱっと出すと、きゃーって逃げるじゃないですか。嫌がることが大好きなの(笑)
−−(笑)。お父さん、お母さんである方の目線で、こういったデジタルえほんなど作られていくと、いいものもできていくのではないかと思います。プロの方だけではなくて、様々な人が協力して作れたら。
木立:ああ、そうですね。おもしろいですね。さっきお父さんと、やっぱり大賞は会社の人だね、いろんなセクションで、チームとして仕事ができるからいいんだよ、って話していたんですけれども。いろんな人が集まって、1つのものつくれば面白いですよね。やることがすごく多すぎるから、分担しないと使った人が満足するものは難しいんでしょうね。
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インタビューを通して、木立さんの語る言葉のすべてから感じる事ができたのは、親として、大人として、こどもたちになにを伝えていけばいいのか、こどもたちにとって本当に良いものとは何なのか真剣に考える、暖かいまなざしなのではないかと思います。
デジタルえほんは、あくまでこれからの時代を生きるこどもたちの生活の一部にすぎません。
紙の絵本や、おもちゃと同様に、スマートフォンやタブレットなどのデバイスは、
おそらくこどもたちの生活の一部として当たり前に存在するものになるのではないかと思います。
そんな中で、こどもたちをわくわくさせたり、楽しませ、想像力を刺激するようなデジタルえほんがあれば、
それはひとつの豊かさと言えるのではないかと思います。
たくさんのヒントがつまった、暖かいインタビューでした。
第三回デジタルえほんアワードは、まだまだエントリーを募集しています。
デジタルえほんをテーマに、みなさんのアイデアやこどもたちへの思いを応募してみませんか?
みなさんのご応募をお待ちしています。
(ほりあい)
『ひとりぼっちのりく』
販売元: Shigeru Kidachi © LIKU version 1.0, Copyright 2012 Liku kikaku.
価格:¥100
互換性: iOS 3.2 以降。 iPhone 3GS、iPhone 4、iPhone 4S、iPhone 5、iPhone 5c、iPhone 5s、iPad、iPod touch(第3世代)、iPod touch (第4世代)、およびiPod touch (第5世代) に対応。
URL:https://itunes.apple.com/jp/app/hitoribotchinoriku/id505044981?mt=8
HP:http://likukikaku.web.fc2.com/Support_page/liku_kikaku.html
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※デジタルえほんアワードでは応募作品を募集しています。
募集部門は、<企画部門><作品部門>の2つ。
こんなデジタルえほんがあったらいいなといったアイデアをお持ちの方は<企画部門>
ぜひわたしのデジタルえほんを見て欲しい!という方は<作品部門>にご応募下さい。
各部門グランプリには賞金20万円、準グランプリには5万円が贈呈されます。
ご応募いただいたものは、豪華8名の審査員によって審査されます。
応募締め切りは6月20日(金)。
皆様のご応募をお待ちしております!
詳細はデジタルえほんアワードオフィシャルサイトホームページをご覧下さい。
【第三回デジタルえほんアワード開催概要】
■ 募集部門 : 企画部門、作品部門
■ 募集期間 : 2014年4月8日(火)〜2014年6月20日(金)
■ 賞 典:企画部門グランプリ(賞金20万円)
作品部門グランプリ(賞金20万円)
企画部門準グランプリ(賞金5万円)
作品部門準グランプリ(賞金5万円)
各部門審査員特別賞 など
■ 審査基準
審査は以下の3つの要素に基づき行います。
・たのしい!
(こどもたちを魅了し、夢中にさせる楽しさ)
・みたことがない!
(これまで出会ったことのない新しい表現)
・世界がひろがる!
(こどもたちの想像力・創造力を育み、世界を広げてくれるしかけ)
≪デジタルえほんとは?≫
タブレット、電子書籍リーダー、電子黒板・サイネージ、
スマートフォン等テレビやパソコン以外の新しい端末を含む
子ども向けデジタル表現を総称して「デジタルえほん」としています。
■ 審査員
※敬称略・五十音順
・いしかわ こうじ / 絵本作家
・角川 歴彦 / 株式会社KADOKAWA取締役会長
・香山 リカ / 精神科医・立教大学教授
・きむら ゆういち / 絵本作家
・小林 登 / 東京大学名誉教授・国立小児病院名誉院長
・杉山 知之 / デジタルハリウッド大学学長
・水口 哲也 / クリエイター・プロデューサー、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(Keio Media Design)特任教授
・茂木 健一郎 / 脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、慶應義塾大学研究特任教授
2014年7月開催の審査会を経て、2014年8月29日、30日開催の
「ワークショップコレクション10」 (主催:NPO法人CANVAS)内にて
結果発表及び表彰式を行います。
主催:株式会社デジタルえほん、NPO法人CANVAS
協力:愛知県立大学情報科学共同研究所
中京大学工学部宮田研究室
デジタルハリウッド大学
武蔵野美術大学
東北芸術工科大学
札幌メディアアーツラボ
女子美術大学
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
東京大学大学院 情報学環・福武ホール
東京コンテンツプロデュースラボ
早稲田大学国際情報通信研究センター
■公式サイト
http://www.digitalehonaward.net